Last update 2006/02/05




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読書日記





あ行



モロッコ水晶の謎 By 有栖川有栖

 恋愛ドラマで大学助教授を演じて当たり役だったことから、<助教授>とのニックネームで呼ばれる志摩征夫。彼が誘拐され、妻と義父のもとに身代金を要求する電話があった。妻の恵里香は身代金を持って、誘拐犯の指示通りに大阪発野洲行きの電車に乗って赤い目印を探すが、それらしいものは発見されなかった。秘密裏に同行した警察の捜査も空振りに終わった。その翌日、<助教授>の遺体がモーテルで発見された。死亡推定時刻は脅迫電話よりも前だった。――『助教授の身代金』
 尼崎の安遠町で朝倉一輝が射殺され、そこから車で15分の豊中市の別院町で番藤ロミが射殺された。線条痕から二つの事件に使われたの拳銃は同一のものだと断定された。しかし、二人に接点は見当たらない。地名と姓名のイニシャルが同じ人物を、アルファベットのAから順に殺害することを仄めかす手紙が警察に届いたことから、捜査はさらに混迷を極めた。千曲町で茶谷滋也、道元町の壇亜由子とクリスティの『ABC殺人事件』となぞるような犯行が続く。――『ABCキラー』
 雑誌のインタビュー企画のために、占い師の畝美苗を取材することになった有栖川有栖は、編集者の片桐とともに羽田野書林の社長の豪邸を訪れた。美苗は水晶玉で羽田野書林の経営を助言する立場であり、姪の明海とともに羽田野の邸宅に居候していた。インタビューのついでに、羽田野から小説家になりたがっている息子の弘俊を紹介され、アリスはそれが縁で社長の誕生パーティーに招かれる。事件は乾杯の一声の直後に起きた。社長の長女の婚約者はジュースを飲み干した直後に倒れた。毒物による中毒死だった。最初にグラスを手に取ったのは被害者本人で、それ以降、誰にも投毒の機会はないように思われた。――『モロッコ水晶の謎』

 手ごろな長さでどれも面白いし、バラエティに富んでいて良い短編集だと思う。私は表題作の『モロッコ水晶の謎』が好みだった。アリスの狼狽に始まって、火村の苦悩、犯人を追い込む罠、そして殺意と犯罪のトポロジー。登場人物の内面に強く迫っている。淀みなく流れて、完成度も高い。
 また、ミステリの落し所という一点においては、掌編の『推理合戦』が最も秀でており、著者は狙いを定めてど真ん中の直球を投じたような印象を持った。短編よりも短い掌編という形式だったからこそ、読後に残る爽快感はいつまでも褪色しない。

(読了 : 2005/06/11)



エンジェル By 石田衣良

 二人の男が自分自身の死体を埋める場面を目撃した掛井純一は、突如フラッシュバックに襲われ、自分が何者かに殺されて幽霊として存在していることに気付いた。純一は父親に10億円という金で売ら、独立してゲームの仕事を始め、ひょんなことから投資会社エンジェルファンドを設立したところまでは覚えているのだが、死の直前の二年間の記憶を失っていた。
 純一は自分の死の真相を知るために幽霊の力を駆使した。そして、巨匠城戸崎剛の『騒動』という映画に巨額の投資をしていたことを知る。そして、純一を埋めた二人の男たちも映画のプロデューサーと繋がりがあった・・・。

 幽霊というものを使った犯人探しというエンターテイメント作品としては面白いけれども、ミステリという額縁に入れるにはお粗末な作品だ。犯人探しというストーリーために主人公にわざわざ二年間の記憶を失わせ、電気を使う力と音声化・視覚化の特殊な能力を与えて現実の人間とコンタクトできるという設定を与えている。乱暴というよりは、設定面でかなり手を抜いているように見えてしまった。

(読了 : 2005/01/06)



月と手袋 By 江戸川乱歩

 シナリオライターの北村は股野の妻あけみと情通していた。そのことを股野に突きつけられ口論から彼を殺してしまう。それは正当防衛だった。しかし、身の破滅を予感した北村は、強盗の仕業に見せかけるというトリックを思いつく。パトロールの巡査を北村のアリバイ証言者に利用しようという企みあった。

 トリックもさることながら心理の描写に余念がなく、緊張感とスリルがひしひしと伝わってくる。明智小五郎の指示で立ちはだかる花田警部との応戦も見物である。

(読了 : 2004/08/27)



チョコレートゲーム By 岡嶋二人

 作家の近内泰洋は、息子が頻繁に学校を休んでいることを妻に告げられ、息子の省吾に問いただそうとすると、身体のあちこちにできた青アザを見つけた。省吾は反抗的な罵声を浴びせ、その夜は家に帰らなかった。
 翌日の夕刊に、省吾のクラスメイトの貫井直之が殺害されたという記事が掲載される。省吾は部屋でノートを燃やすなど、言動がおかしかった。息子のことが心配になった近内は、学校を訪れて担任の植村に相談した。すると、この一ヶ月ぐらい生徒たちの様子がおかしく、下級生から金を巻き上げたり、万引きで補導されるなど頭を悩ましているという。近内は息子が親しかった友達を紹介してもらい話を聞いていると「チョコレートゲーム」という謎の言葉を耳に挟む。
 ある晩、急に荒れだした生徒たちの親同士で話し合いの場を持つことになった。省吾だけではなく、参加者の子供たちの身体にもアザがあるという。そんな話し合いの最中、大きな物音が聞こえ、駆けつけてみると、省吾と親しかった浅沼英一の死体が発見される。現場で目撃された省吾が疑われたが、まもなく警察から省吾の訃報を聞かされた。現場の状況から飛び降り自殺と考えられ、ポケットには貫井が殺される直前に銀行から引き出された百万円が札束が発見された・・・。

 展開が早くてワクワクしながら読み進めた。また、息子に対して疑心を抱きながらも向き合おうとし、信じようとする姿勢に好感が持てる。読み応えもあった。伏線の仕掛け方がきめ細かくて、感覚的に私のストライクゾーンにぴったり当てはまった。
 ただ一点、某金額の計算でケアレスミスがあったんじゃないかと気になった。

(読了 : 2005/04/20)



死にぞこないの青 By 乙一

 小学校5年生になったマサオのクラスを受け持つことになった羽田先生。大学を卒業したばかりで年齢も近く、生徒や親たちから人気があった。ある日、クラスの係決めの相談で、マサオの思い込みから自分が「生き物係り」だと先生に報告した。すると、係りの希望者の相談で、マサオが「生き物係り」ではないことになっており、マサオは羽田先生から嘘つき呼ばわりされてしまう。マサオは嘘をついたのではなく、それが誤解だと反論できなかった。
 それからというもの、羽田先生はクラスで起きたことはすべてマサオのせいにするようになった。羽田先生が作った暗黙のルールに、クラスメイトまでマサオと距離を置くようになった。そんな時、顔が青くて拘束服を着た「アオ」が現れた・・・。

 すごく自虐的で退廃的な印象を受けるが、今まで読んだ乙一の作品の中では一番好印象を持った。妙なオチを作っていない分だけ、ストレートに受け入れることができて読後もさわやかだ。作中で「アオ」の存在について隠そうとしていないので吐露するのだが、今こうして感想を書いていると、「マサオ」と「真っ青」は隠れたコードだったのではないかと思われる。

(読了 : 2005/04/02)






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